確率を高める為には以下のような手順になります。
○ 穂木を採取するまえに穂木への養分蓄積。
(採取前からリン酸、カリウムを多めに与える)
↓
○ 齢が若く、用土に近い部分の穂木を採取する。
↓
○穂木を斜めにカットして 発根剤を使用し無菌の用土に挿す。
(このときに穂木は水には漬け込まない)
↓
○乾燥を防止、地温を25℃に近づけ、十分な潅水を行う。
↓
○植物にもよるが、約2、3ヶ月程度で新しい芽が伸び始める。
カルスの形成
【発根および有用物質の流失防ぐためには 適度なカルスの形成を行わせる】
植物を切断したり傷つけたりすると、切り口に保護壁のようなものが出来る
それが「カルス」です。
過程としては、植物が傷を受けた細胞はオーキシンを分泌して、茎の上部から流される
成長ホルモンとして、オーキシンの作用によって癒傷組織とも言われるカルスを形成する。
カルスが形成される事によって傷は病菌から保護され、傷からの有用物質の流失も防がれる。
形成されたカルス内に根原基(根)の分化が始まる。
しかしカルスは切り口の保護のためには必要であるが
発根過程においては必ずしも不可欠とはいえず過度のカルス形成は発根を阻害することが多い。
根原基(根)の分化は成長ホルモンのオーキシンによって促進される。
発根剤のオキシベロンはオーキシンの一種のインドール酪酸の製剤であり
ルートンはナフタレン酢酸アミドである。
(ナフタレン酢酸アミド =植物ホルモンのインドール酢酸に構造が類似しており、オーキシンとしての作用を持つ)
穂木
【 穂木には齢が若く、用土に近い部分を使用する。】
○幼若性
植物の発根能力は、植物体の齢と関係があり齢が若いほど発根能力が高い。
この植物体の齢は幼若性ともよばれ若いほど幼若性が高いと言う。
樹木全体の幼若性を分類すると幹(根)に近い部分ほど幼若性が高く、
先端に近いほど幼若性が低くなる。
すなわち、齢が若く、根に近い部分が幼若性が高く発根能力が高い
ということになるので、発根率を高めるためには極力
齢が若く、根に近い部分を利用するほうがいい。
【 挿し穂の芽は成長開始前の状態にあるものが良い 】
○挿し穂ステージ
挿し穂の芽の活性が高い部位を用いると発根がみられないにも
関わらず盛んな芽の成長がはじまり、一見挿し木が成功したかも
見えるが実際には好ましくない現象と言える。挿し穂の芽の
動き始めたものは目の成長に多大なエネルギーを
必要とするため、発根にエネルギーが回らなくなり
発根率が低下する。
※筆者も何も知らない時に水差だけで発根させようとしていたら
よくこのような現象が何度も起きたことがある。
○挿し穂
挿し穂の調整の際に2節以上の挿し穂を用いる場合には
切り口は節の少ししたで切断すると発根率が高まる。
○穂木の養分蓄積
【親木から採取する場合は晴天が続いた日を選ぶ】
【挿し穂を採取する前は、窒素過多とせず、特にリン酸とカリウムを多めに与える】
【十分な潅水を行う】
発根前の穂木は、基本的に茎内に含まれる、養分でまかなわれるので、穂木採取前の親木
の管理が極めて重要な要素となる。この部分を押さえておかないと
挿し木に費やした時間の大部分がロスになる可能性が高くなる。
挿し床
【挿し穂を採取する前は、窒素過多とせず、リン酸とカリウムを多めに与え、細胞壁が肥厚させる】
病害の侵入は細胞壁の厚さと密接な関係があり、細胞壁が厚いものほど菌が進入
しにくくなる。一般に窒素過多の条件で栽培したものや若い枝は細胞壁が肥厚しておらず、
薄いため病害にさらされやすい。
病害の対策
【無菌の用土の選択】
【雑菌の混入していない用水の利用】
【未熟な穂木を用いない】
【窒素過多で穂木をとらない】
病害三種類
1ピシウム、疫病、フザリウム、リゾクトニアなどの直接的が病害。
2維管束が菌により塞がれて枯死する。
3線虫による食害。
○ 用土
用土には、通気性、排水性、保湿性がよく雑菌がない清潔な用土を選びます。
一般的には保水性のよい赤球土や、通気性と排水性のよい鹿沼土などが
使われています。
「ピートモスとバーミキュライト、鹿沼土、パーライトを同量づつ混合したものを使用しています。この用土で何にでも
つかっていますが、発根は上々です。」
<引用 より簡単で確実にふやせる、さし木、つぎ木、とり木 P14P>
鹿沼土
栃木県鹿沼地方から産出される弱酸性の軽い土、多孔質で保水性、通気性がよい。
かわくと白っぽくなる。
バーミキュライト
蛭石を高熱処理した無菌の人工土。非常に軽く、保水性、排水性、通気性がよい。
パーライト
天然ガラス系の岩石を高熱処理した粒状の人工土、非常に軽く、保水性、排水性、通気性がよい。
ピートモス
湿地の植物が堆積、分解されてできた土酸性を示し無菌、保水性、排水性、通気性がよい。
温度管理
【地温を25℃にもっとも近づけるのが理想的な温度管理】
発根能力は25℃まで高まり、25℃以上の温度になると低下していく。
病菌は30~35℃まで増殖率が高まる。
【発根に問題ない程度に葉をカットする】
主に3、4枚程度葉を残し、半分ほどカットする
挿し木後の挿し穂の葉から蒸散は普通に行われるが、吸水は主に切り口から行われる
だけなので水分がたりずに、発根率を低下させる。主に葉面責が多いと蒸散が多いので
発根に問題ない程度に葉をカットしておく。
【直射日光にさらさない 日向の蒸散量は日陰の4~20倍となる】
【高温条件で放置しない 穂木の呼吸をそくし、穂木に含まれる養分をうしない、発根が阻害される】
【風に当てない 過剰な蒸散を盛んにするため、風を当てない】
【湿度をたもつ 蒸散を制御するため】
【水に浸漬しない 挿し穂の水の浸漬は病害の発生をまねきカルス形成を阻害する】
色々な種類の植物の挿し木を行って色々な場所で試しましたが。
個人で行うレベルであれば朝一時的に日光が当たる日陰の場所が
樹木の挿し木を行うに良い条件を満たしていると思います。
多肉植物などはこの条件に該当せずに、一日中日光が
当たるような場所が良い種類のものが多い。
(サンセベリア等)
挿し木の維持管理で重要なことは潅水と乾燥の防止である。
多量に挿し木を行う経済栽培の場合乾燥の防止をどうまく行うかが最終的に
挿し穂を多量に生きのこらせるカギとなる。
○落葉広葉樹(ブナ,ミズナラ,ケヤキ,リンゴ,ボケ)
2~3月に前年枝を挿す春ざし、6~9月初夏までに
新梢を挿す、梅雨ざし、夏ざしがおこなわれます。
○常緑広葉樹(カシ,シイ)
充実した前年枝をさす3月中旬~4月上旬の春ざし
9月の秋ざしが行われます。
○常緑針葉樹(,マツ,モミ)
新梢が動き出す前の前年枝をさす。4月~5月上旬の春ざし、7~9月の新梢
をさす梅雨ざし、夏ざしがおこなわれます。